令和7年1月15日(水)、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)は「第27回(2024年)秩父宮スポーツ医・科学賞」の受賞者を発表し、日本健康運動看護学会評議員である田中喜代次氏(筑波大学名誉教授、日本介護予防・健康づくり学会理事長)が、功労賞を受賞されました。
「秩父宮スポーツ医・科学賞」は故・秩父宮妃殿下のご遺志によってご遺贈金をもとに設立された基金で、その功労賞は「多年にわたりスポーツ医・科学分野において、その向上発展に貢献し、我が国スポーツ界の振興に特に功績顕著な者。」に与えられる大変名誉な賞であります。
田中先生は、日本健康運動看護学会設立時から評議員として、学会運営、健康スポーツナースの養成等の多岐にわたりご尽力いただいております。この度のご受賞、学会員一同、心よりお慶び申し上げます。
(田中先生のご功績)
田中喜代次氏は、我が国の健康づくりや介護予防分野の草分け的存在にして、40年以上の長きにわたり、現在も第一人者として当該分野の発展に幅広く貢献し、牽引し続けている。特にスポーツ医学及び健康増進学においては、国内外の医療系・体育系学術誌に760編の科学論文を発表するなど、国内で高く評価されるにとどまらず、欧米諸国やアジア諸国 でも大いに注目され、著書は分担執筆を含めると 57冊にも及び、我が国の国際的な学術レベルの向上にも顕著な貢献を成し遂げた。
学会活動においても同氏は、日本健康支援学会の理事長を2010 年から2019年の9年間務め、日本介護予防・健康づくり学会の会長/理事長を2018年から現在も務めるなど、健康づくり・介護予防分野のリーダー的存在であり続け、国際学会においても数々の役職を務めている。また、1986年以来、アメリカ、カナダ、ドイツ、フィンランド、オーストラリア、ブラジル、中国、韓国、台湾、及び日本国内で開催された国際学会において、基調講演やシンポジウムの司会、演者を務め、これらの学会活動を通してスポーツ医学・健康増進学分野における我が国の存在感を世界の中で高めたと同時に、当分野を国内外で力強く牽引してきた。
また、日本体育協会(現、日本スポーツ協会)医・科学研究プロジェクトにおいて、 2002年度から2005年度に「中高年者の運動プログラムに関する総合的研究」、2009年度から2012年度に「高齢者の元気長寿支援プログラム開発に関する研究」、2016 年度から 2018 年度に「運動・スポーツ習慣の定着を企画した健康華齢支援プログラムの開発」の3期11年間にわたり研究代表者を務めた。中でも「中高年者の運動プログラムに関する総合的研究」において作成したガイドライン(平成14年度日本体育協会スポーツ医・科学 研究報告 No II 中高年の運動プログラムに関する総合的研究(第1報)は、2007年に超高齢社会を迎え、以降も高齢者割合が増えつつある我が国にとって、運動・スポーツ・レクリ エーションを通して、要介護・寝たきり予防を実現し、より多くの中高年者が、健康で活力ある期間(健康寿命)を長く維持するための有効な手引きとなりうる。この研究成果により、同氏を代表とする研究グループは、2008年度に第11回秩父宮記念スポーツ医・科学賞奨励賞を受賞している。 さらに、これらの研究から Enjoy Sports による健康華齢(successful aging)なる概念が生まれた。そのプログラムが4冊の著書に集約されており、我が国の中高年者の身体活動の促進や健康増進に大きく貢献した。
その他、スポーツ医学および健康増進学に関する研究成果により、2021年に日本教育医学会学会功労賞など数多くの研究表彰を受賞している。日本スポーツ協会においては、スポーツ医・科学委員会委員、栄典・顕彰委員会委員を長年にわたり務め、このほか 2008年6月に日本政府(外務省)による日本人ブラジル移住100周年記念講演会において、「Life Quality: Japanese and Brazilian Experience」をテーマに講演、2015年10 月以降は、中央民族大学体育学院(中国)の客員教授を務めるなど国際的な活躍も顕著である。 2005年には筑波大学発ベンチャー企業(株式会社THF)を設立し、現在に至るまでの20 年間にわたり、研究知見を社会実装化するなど、健康支援の現場においても卓越した成果を 残している。同氏は、グローバルに卓越した研究者であるとともに、諸学会の活動や社会への普及啓発活動など多方面において顕著な実績を残しており、スポーツ医・科学への貢献は多大である。